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こころ温まるお話「わが家の振り子時計」

       

「この時計止まってるよ」

久々に実家に帰った時のことだ。
居間に飾ってあった振り子時計がすっかり止まっていることに気づいた。

夜は静かな部屋にカチカチと不気味な音を響かせていたし、朝にはボンボン鳴って、少しでも起きるのが遅れようものなら、よく祖父に怒られたので、厳しい祖父の声と振り子時計の音は今でも少し苦手だ。
しかし、こうして静まり返っている様子を見ていると、かえって居心地の悪さすら覚える。

「壊れたの?」

特に考えなしに思いついたまま母に尋ねる。

すると「あんたが家を出て必要なくなったから、おじいちゃんが止めたの」なんて答えが返ってきた。

どうせ止めるなら僕が住んでいる時から止めてくれても良かったのに。
そんなことを考えていると、母がさらに続ける。

「あんた小さい頃は遅刻ぐせが酷かったでしょ?いつだったかそれが原因で友達と喧嘩して、ひどく落ち込んで帰ってきたことがあったんだよ。
そしたらおじいちゃんが物置からあの時計を引っ張り出してきてね」

必死に記憶の糸を手繰り寄せるが思い出せない。

相当小さい頃の話だろうか。
それ以来、振り子時計は家族の目覚ましになり、時間に厳しい祖父が誕生したのだと、母は話してくれた。

考えてみれば、物心ついてからは「時間に正確だ」と褒められることが多かった。
自分の長所だと思っていたが、どうやらすべて祖父のおかげらしい。
それならそうと、どこかのタイミングで言ってくれても良さそうなものを、口下手な祖父らしい話だ。

その夜、家族で夕食を囲み、一通り団らんを過ごした後、僕は「時計を動かしたい」と祖父にお願いしてみる。
祖父は少し意外そうな顔をしつつも、どこからかネジを持ってきて「ほれ」と渡してくれた。

ネジを巻くと、時計はカチコチと音を鳴らしはじめる。
苦手だと思っていたこの音も、鳴っていないと寂しかったのは、どこかありがたい気持ちがあったからなのかもしれない。

「じいちゃん、ありが――」

ありがとう、そう言おうした時に時計がボーン!と大きく鳴り始めた。
もう一回あらためて言うのはなんだか気恥ずかしいな。
そう思いながら祖父の顔を見ると、その頬が一瞬緩んでいたのを僕は見逃さなかった。

     

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