院長ブログです
経理の仕事を10年以上続けてきた。数字は嘘をつかない。だからこそ、ミスがあってはならないと、同僚の小さなミスにもつい口を出してしまう。指摘の回数が増えるほど、周りとの会話がぎこちなくなっていくのを感じていた。
そんなある日、気分転換のつもりで木工教室に参加した。
けれど、木工教室では仕事以上に苦戦した。木目のくせ、乾き具合、釘の通り道。毎回違い、毎回思い描いたようにならない。しかし、隣の席の70歳になる村瀬さんは、線がずれても笑っていた。「まあいいわ。ここからどうしようか考えるのが面白いの」その言葉に、ずれて良いわけがないと内心思っていた。
そんな中、釘を打ち込んだ衝撃で板がバキっと割れた。仕事なら即アウトだ。反射的に「失敗だ」とつぶやくと、村瀬さんが「失敗じゃないわよ」と軽く首を振り、自分の作品の裏側を見せてくれた。そこには、修正した跡がいくつも残っていた。
「失敗したところが新しい見せ方を教えてくれることもあるの。予定どおりにいかないことを許せないとね、人生そのものが苦しくなっちゃうのよ。」
その言葉が胸に深く沈んだ。これは木工の話ではない。私自身の話だと思った。
割れた部分を活かすように続けていくと、当初の図面とはまったく違う、小さな飾り棚が仕上がった。部屋に置くと、いびつな曲線が不思議と優しく見える。予定どおりにいかない形のほうが、心に余白をくれる気がした。「予定と違っても、新しいところからまた考えればいい。」棚の横で、村瀬さんの言葉が静かに響いていた。