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こころ温まるお話「マドジー」

       

うちのおじいちゃんは、「マドジー」と呼ばれている。毎朝、窓から子ども達に声を掛けるからだ。
通学班の見守りボランティアを引退後、窓からでも見守りを続けるのはきっとよいことなんだろうけれど、私は少し恥ずかしい。
仕方なく、小学生がいなくなったのを見計らって家を出るから、高校に着くのはいつも遅刻ギリギリだ。

ある日、学校から帰るとおじいちゃんは部屋にこもっていた。腰を痛めて病院に通うことになったらしい。
翌朝、子ども達の声が聞こえる時刻になってもおじいちゃんは起きてこなかった。
さすがに気の毒に思いながら朝の支度をしていると、外からこんな声が聞こえてきた。

「マドジーいないの?」

「マドジーがいないと、一日が始まらないよね!」

私は布団の中で寝ていたおじいちゃんを急いで起こす。

「おじいちゃん、起きて!」

いつもの窓を開けると、ひときわ元気な声が部屋に入ってきた。

「おーい!マドジー、おはよう!」

「マドジー、行ってきまーす」

振り返ると、おじいちゃんは目を真っ赤にうるませている。

「まったく、寝かしてももらえんのよ」

おじいちゃんはそう言うと、「よっ!」と大きく気合を入れて立ち上がり、窓から子ども達に声を掛け始める。

「今日も、気を付けていけよー」

「しゃべっとらんで、前向いていけー」

腰の痛みでつらいのに、いつも通り振る舞う「マドジー」を見て、私は今までの気持ちが恥ずかしくなった。

「おじいちゃん、がんばってね!」

おじいちゃんは驚いていたけれど、嬉しそうに「気をつけていけよ!」と送り出してくれた。

いつもと違って、子ども達で賑わう通学路。
新鮮な気持ちで足を踏み出したとき、ラベンダー色のランドセルの子に声をかけられる。

「おはようございます」

私はとっさに「おはよう、車に気をつけてね」と答えた。

いつもより軽い足取りで駅へと向かう中、

「さっきのはまるでマドジーみたいではなかったか」

そう自問したが、それも悪くないと思えた。

     

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