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こころ温まるお話「思い出の映画」

       

「一緒に映画を観に行きたいな」

誕生日に何がほしいか、母に直接尋ねてみたところ、この答えが返ってきた。

「せっかくの誕生日プレゼントがそんなのでいいの?」

そう尋ねると、母は意味ありげに笑い、「この歳になると金額じゃないのよ」と、少し演技がかった言い回しをした。

数日後、私たちは駅前のミニシアターに訪れ、座席で映画の上映を待っていた。
母の希望は10年前のフランス映画で、再上映している劇場も僅かなマイナーな映画だった。
最初は特に興味はなかったが、スクリーンに映し出される映画を眺めていると、気付いたときには、その上品な作風に引き込まれていた。

劇場から出ると同時に、こっそり買っておいた映画のパンフレットを母にプレゼントした。
『この歳になると金額じゃないのよ』と言いながら母に手渡すと、母はくすりと笑った。
この言葉は、映画の台詞だったのだ。

「でも、台詞を知っていたってことは、前に観たことあるんだよね?レンタルだってありそうだし、なんでわざわざ劇場に観にきたの?」

母はパンフレットを懐かしそうに眺めながら答える。

「実はナオが中学のとき、一緒に観たかった映画なんだけど、当時は断られちゃったからね」

その言葉で私はハッと思い出した。
中学生の頃にも、私は母から映画に誘われたのだが、その誘いを「親子で映画なんて恥ずかしい」と断っていたのだ。

たちまち当時の自分の言動が申し訳なくなり「お母さん、あの時はごめん」と慌てて謝る。

すると母は「よくよく考えたら当時のナオにはまだ早かったかもな、って思ってたから、こんな日が来て嬉しいよ」と、私の肩を軽くこづいた。

映画の母娘もギクシャクした時期を経ながら歳を重ね、結末では自然とわだかまりが解けていた。
大きな出来事があったわけでもない。そういうものなのかもな、と今なら理解できる気がする。

帰りにカフェに寄り、映画の内容についてゆっくりと語りあった。
昔の私だったら退屈で、それこそ、へそを曲げて母と喧嘩になり、こんな時間は過ごせなかったと思う。
私も映画に出てきた娘のように、少しは成長できたのかもしれない。

     

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