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こころ温まるお話「約束の手紙」

       

「お父さんの嘘つき!」普段よりも大きな声を出しながら、息子は勢いよく部屋のドアを閉めた。
まだ小学校3年生の息子は、来週の授業参観に私が来ることを楽しみにしていた。
しかし、急な仕事が入ってしまい、行けるかどうか怪しくなってしまったのだ。

「来てくれるって言ったのに…」

夕飯の席で小さくこぼす息子を、妻が「しかたないでしょう」と静かにたしなめる。
授業参観で使うという宿題を、どういうわけだか息子は手をつけていなかった。
そこで先日、『宿題を終わらせる代わりに、父さんが必ず行く』という約束をしていたのだ。

「ごめんな。でもお父さんギリギリまで頑張るから、待っててくれるか?」

息子は小さくうなずくと、黙々とご飯を食べ終えた。

授業参観当日、なんとか仕事の都合をつけて早退すると、急いで学校へと向かう。
学校が見える頃には、もう授業が始まっている時間だった。
教室のドアを静かに開けると、私に気づいた妻が口の動きで「こっちだよ」と言いながら手招きする。
妻の隣に落ち着くと、ちょうど息子が立ち上がり、作文を読み上げるところだった。
大きく息を吸いながら、一瞬だけこちらを見た息子と目が合う。

『お父さんは、僕たち家族とよく“約束”をします。
休みの日に遊園地に連れていってくれる、と約束した時は必ず連れて行ってくれるし、お母さんが「洗い物はやってくれる約束でしょ」と言うと、慌ててすぐにやっています。』

教室中から起こる小さな笑い声に包まれて、妻と二人少し恥ずかしい気持ちになる。

『だから、お父さんが「授業参観に行けないかも」と言った時は、とても悲しくなって、ひどいことを言ってしまいました。
でも、僕はやっぱりお父さんみたいになりたいです。それは――』

一度言葉を切り、ひときわ大きな声で息子は続けた。

『――お父さんはきっと今日も約束を守ってくれるからです。
だから僕も、この作文を最後まで書くことにしました。それがお父さんと僕の約束だからです。』

作文を読み終えたあと、私は誰よりも大きな拍手を息子に送りながら、黒板に書かれた文字を見て、この作文のテーマが「大切な人への手紙」だったことを知る。

授業の後は保護者と一緒に下校することになっていた。

両手を私と妻の手で塞がれた息子は、時折その手に体重を預けながら嬉しそうに歩いている。

「ちょっと不安だったけど、やっぱりお父さんはお父さんだね」

その言葉に、心の中で『息子が誇れる父親でいよう』と誓った。

     

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