院長ブログです
私は毎週末、近所のレンタルスタジオでフラダンス教室を主宰している。
以前パフォーマーをしていた経験を活かし、フラの魅力を広く伝えるために始めたものだ。慣れない講師という役割に当初はあっぷあっぷ状態。
レッスン後にスタジオ隣のおそば屋さんで一杯やるのが唯一の癒しだった。
そんな教室もどうにか1年続き、おそば屋さんを経営する老夫婦とも顔馴染みになった。
教室のプログラムは初心者向けで、年齢や性別を問わない。そのため、「ウエストにくびれを作りたい」という主婦層や「ちょっと体験してみたい」というライトな生徒が多い。ただ、長続きする人は少なく、入れ替わりが絶えなかった。私はそれを少し寂しいな、と感じていた。
あるとき、レッスン後におそば屋さんで店主の奥さんと話していたときのことだ。
「この店を始めた理由って、おそばが好きだったからですか？」と尋ねると、彼女は首を振り、「おそばも好きだけど、ここでたくさんの人と出会えるのが楽しいからよ」と微笑んだ。
その答えを聞き、フラをただ「教える」だけではなく、人と人が繋がるきっかけになるような場所にしたい、とぼんやり考えるようになった。
それから少しして、店主からお店を畳むと聞かされた。「年齢がね、もう無理しちゃいけないのさ」との言葉に、今後この優しい夫婦と会えなくなるのかと思うとやりきれなかった。
さらに生徒の退会も続き、私はダンス教室を続ける気力を失いかけていた。しかし、そんな折、予想外の申し込みが舞い込んだ。時間ができちゃったからねぇと言ってやってきたのは、なんとおそば屋さんの店主と奥さんだった。
こんな年寄りでもできるかなと心配する2人に、私は涙ぐみながら答えた。「もちろんです！」と。
フラの魅力を伝えたくて始めた教室が、こんな形で「縁」を繋ぐ場所になるとは思ってもみなかった。
「縁」というのは形を変えながら繋がり続けるもの。そう思えた今、ダンス教室はもうすぐ3年目を迎えようとしている。
