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こころ温まるお話「お母さんの卵焼き」

小学生の頃、お母さんが作ってくれた卵焼きが大好きだった。ほんのり甘く、冷めてもふんわりしていて、遠足や運動会には必ず入っていた。
友達から「サヤちゃんちの卵焼きおいしそう!!」と言われるたび、ちょっぴり誇らしい気持ちになったものだ。お母さんは「早起きは大変だけど、お弁当を楽しみにしているだろうから」と笑っていたのをよく覚えている。

一人暮らしを始めてから、あの味を思い出して何度も卵焼きを作ってみたが、どうしても違う。
レシピサイトを調べて調味料を変えてみたり、フライパンを変えてみたりしたが納得の味にはたどりつかなかった。

帰省した折、思い切って母に「作り方を教えて」と頼んでみた。台所で並んで卵を溶きながら、母の手つきの真似をする。

砂糖とみりんの割合や火加減、巻き方。
母は「レシピなんてないよ」と笑いながらも、自然に体が動いていく。その様子には長年の習慣が染みついていた。「何百回も作ってきたからね。みんなが喜んで食べてくれたから続けられたんだよ」と母がぽつりとつぶやいたとき、胸が熱くなった。
教えてもらったとおりに自分が作った卵焼きを口に運ぶと、懐かしい甘さが口の中いっぱいに広がった。

数日後、自分で作った卵焼きをお弁当に詰めて会社へ持っていった。弁当箱を覗き込んだ同僚が「卵焼きおいしそうだね」と言ってくれたとき、うれしくて自然に笑みがこぼれた。

母の想いが込められたあの甘さと温かさが自分の卵焼きにも確かに受け継がれたように思えた。

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