院長ブログです
スーパーからの買い物帰り、駐車場に向かっていると買い物カゴを乗せたカートをそのまま放置していく人をよく見かける。
カートぐらい戻せばいいのに、と思いながらも、私はいつも自分のカートだけを置き場に返して帰っていた。
ある日、いつもより荷物が多かったので、カートにカゴを乗せたまま車まで運んできた。荷物を積み終えたあと、カートを返そうと振り返ったところ、隣の車の人が「一緒に持っていきますよ」と言いながら、自分のカートに私の分のカートを重ねて返しに向かおうとしていた。
「あっ、すみません、ありがとうございます!」
驚いて返事をすると、その人は笑って「ついでですから」と軽く手を振って立ち去った。小さなことだった。でも、なんだか胸に残った。
あの人は、私が困っていたわけでも、頼んだわけでもないのに、自然にやってくれた。
次の週、いつものスーパーに買い物に行くと、荷物を積み終えたあと、カートをそのままにして立ち去っていく人をたまたま目にした。
いつもの私なら眉をひそめて終わるところだった。でもそのとき、私はそのカートを自分のものと重ねて返しに行った。
別に感謝されたいわけじゃない。ただ、あのときの「ついでですから」のひと言が、ふと心に浮かんだのだ。
ほんの数メートルのこと。重たいものでもない。
でも、あの人みたいに自然にできた自分に、小さなやさしさがひとつ増えたような気がして、ちょっとだけ嬉しくなった。